試鋳貨幣(試作貨幣)とは?アンティークコインで有名な5つの試鋳金貨・銀貨もご紹介

 

コインの値上がりを期待するなら、ぜひ覚えておきたいのが試鋳貨幣(しちゅうかへい)の存在です。

試鋳貨幣は、試作貨幣(しさくかへい)とも呼ばれるコインのことで、英語ではPattern Coiin(パターンコイン)といいます。実は、アンティークコインのコレクター・投資家でも意外と知らない人は多く、ちょっと上級者向けの狙い目のコインなのです。

試鋳貨幣とは一体どんなコインなのか、通常のアンティークコインと比べて価値はどうなのか、今回は、試鋳貨幣について詳しく解説していきます。最後に有名な試鋳金貨・銀貨もご紹介していきますので、ぜひ最後までお付き合い下さい。

 

 

試鋳貨幣(試作貨幣)とは

試鋳貨幣とは、試作貨幣、Pattern Coinとも呼ばれる、発行予定のコインのテストサンプルのことです。

大量に発行する前のテストサンプルとなる試鋳貨幣は、ごく限られた枚数しか鋳造されません。通常は数枚~数十枚程度となり、市場に出回ることも稀です。博物館や造幣局でのみお目にかかれるといっても過言ではなく、試鋳貨幣の価値は非常に希少で、高額で売買されるコインも多いのです。

経験を積んだコインコレクターが最後にたどり着くのが、この試鋳貨幣だといわれています。

 

試鋳貨幣の特徴・メリット

試鋳貨幣の特徴・メリットは大まかに3つあります。

 

発行枚数が少なくレア度(希少性)が高い

まず、試鋳貨幣のメリットの1つは、極めてレア度が高いことです。

試鋳貨幣はあくまでもテストサンプルとなるため、大量に鋳造する必要がありません。大まかにコインのサイズやデザイン、質感や素材などに問題がないかを確認することが目的です。1、2枚程度しか鋳造されないこともあるのです。

多い場合でも数十枚程度と、通常のコインに比べて発行枚数が圧倒的に少ないことが魅力になっています。

 

保存状態がよい場合が多くグレードも高め

次に抑えておきたい試鋳貨幣の特徴は、保存状態がよい場合が多く、グレードも高めものが多いことです。

というのも、試鋳貨幣を収集するのは経験豊富なコレクターや投資家、プロのコイン業者が多いからです。中には試鋳貨幣専門のコレクターもいます。ほとんどの試鋳貨幣が売却することを目的に、入念に管理・保存されています。

ごく一部の層によって細心の注意のもとで取り扱われているため、古いコインでも未使用・未使用に近いコインが多いのです。

 

高額になりやすい

そして、試鋳貨幣の最大のメリットとは高額な値がつきやすいことです。発行数に限りがある試鋳貨幣は、市場に出回る数にも限りがあります。いざ購入したくとも、そう頻繁に市場に出現するわけではありません。

売買の機会がかなり限定されてしまうことから、高額でも欲しがるコレクターは少なくありません。とくに、もともと人気があり希少価値が高いコインの試鋳貨幣となれば、価格が跳ね上がることも多々あるのです。

 

アンティークコインで有名な5つの試鋳貨幣

それでは、実際にどのような試鋳貨幣があるのか、有名な5つのコインをご紹介したいと思います。アンティークコインでお馴染みの英国コインを中心に金貨3つと銀貨2つを選んでみました。



英国ジョージ4世2ポンド試鋳金貨

 

最初にご紹介したい1枚は、ジョージ4世の試鋳金貨です。ジョージ4世はハノーバ朝3代目の君主で英国コインの王道と呼ばれるヴィクトリア女王の祖父にあたる人物です。

何かとスキャンダルが多かったハノーバ朝君主の中でも、ジョージ4世は真面目で品行方正、天文学や語学、歴史、商業、法学など多方面の分野に長けていた教養深い君主として一線を画す君主として有名です。

上記は1825年のジョージ4世2ポンド金貨で、歴代ソブリン金貨デザイナーであるウイリアム・ワイオンの肖像です。HARITAGE AUCTIONSによるとオークションの出品記録は過去に遡っても5回のみ。コイン鑑定機関のNGCでも鑑定歴は2枚のみと非常に希少なコインです。

  • 発行年:1825年
  • 発行数:不明
  • 参考価格:PR64  約260万円(2020年11月のオークション価格)

参照:HERITAGE AUCTIONS

 

英国ウィリアム4世5ポンド試鋳金貨

 

次にご紹介する有名な試鋳金貨は1930年のウィリアム4世5ポンド金貨です。

ウィリアム4世は青年時代を海軍で過ごし、ジョージロドニー提督率いるスペイン艦隊の撃破に参加するなど、「船乗り王」の名前で親しまれた君主です。

1930年はウイリアム4世即位の年で、ちょうど前君主であるジョージ4世と入れ替わりの年でした。ジョージ4世の即位期間と重なるため、もともと1930年のウィリアム4世のコインが少なく、とくにこの試鋳金貨は発行数が5枚~9枚程度という貴重な存在です。

  • 発行年:1930年
  • 発行数:5枚~10枚
  • 参考価格:PR62 約230万円(2014年8月のオークション価格)

参照:HERITAGE AUCTIONS

 

フランスナポレオン金貨100フラン試鋳金貨

 

こちらは、西洋歴史ファンにはたまらないフランス皇帝ナポレオン3世の試鋳金貨です。ナポレオン3世はフランス革命後の英雄ナポレオンの甥にあたる人物。

ナポレオン3世は、王政復古により政治犯として亡命生活を強いられた後、数々の逮捕・終身などの危機を乗り越え1852年にようやく皇帝の座につきました。

上記は1955年のナポレオン3世100フラン試鋳金貨です。NGC、PCGSでもナポレオン3世の試鋳金貨は鑑定数が目立って少なく、希少価値が高いことで有名です。伝説のコインとも呼ばれています。表面下部のAはフランス語のPattern(ESSAI)であることを表したものです。

  • 発行年:1955年
  • 発行数:不明(極めて少ない)
  • 参考価格:PR65 約900万円(2014年8月のオークション価格)

参照:HERITAGE AUCTIONS

 

英国ジョージ3世クラウン試鋳銀貨「スリーグレーセス」

さらにシルバーコレクターのために、とっておきの試鋳銀貨をご紹介します。

上記はウイリアム・ワイオン作の1817年のジョージ3世クラウン試鋳銀貨「スリーグレース」です。ジョージ3世は先にご紹介したジョージ4世の父にあたる人物です。

「スリーグレース」とギリシャ神話に登場する3人の女神(ゼウスの娘)のことで、歓喜、気品、若さと美、を象徴しています。「スリーグレース」は英国コインの中でも偉大なる傑作と呼ばれているコインで、18世紀のアンティークコインを代表する1枚です。

  • 発行年:1817年
  • 発行数:不明
  • 参考価格:PR64 約2,100万円(2019年1月のオークション価格)

参照:HERITAGE AUCTIONS

 

英国ジョージ4世クラウン試鋳銀貨「ラージヘッド」

 

そして最後にご紹介するのは、英国コインでは珍しく大胆な構図の肖像が刻まれたジョージ4世の試鋳銀貨「ラージヘッド」です。

コインから飛びださんばかりに刻まれた肖像、躍動感と力強さに満ちた王室の紋章、独特のインパクトを与えるオリジナルティに満ちた1枚です。両面ともジョージ・ミルスによるデザイン。

試鋳として年号の箇所にはMDCCCXXと表示されているのが特徴です。試鋳貨幣の中では発行数はやや多めで、PCGSとNGCで合わせて66枚が鑑定済みとなっています。比較的に入手しやすいかもしれない点がおすすめポイントです。

  • 発行年:1820年
  • 発行数:不明(数十枚程度?)
  • 参考価格:PR64 約200万円(2014年4月のオークション価格)

参照:HERITAGE AUCTIONS

 

試鋳貨幣(試作貨幣)について知ろう

試鋳貨幣アンティークコインで成功するための3大ポイント、希少性、グレード、価格高騰の可能性を有しているコインです。将来性を期待するなら見逃せないコインです。

ただし、あまり取引されないマイナーなコインの試鋳版などは数千円程度で売買されているコインもあります。どのコインの試鋳なのか、現在の相場はいくらぐらいなのか、値上がりが期待できる人気のテーマ・人物・国を選ぶことが大切です。

試鋳貨幣は試鋳版であることがわかるように、エッジが平らだったり、アルファベットが記入されていたりと目印があります。実際に流通したコインと試鋳版との違いは何なのかを知ることも重要です。まずは、ネット検索にて試鋳貨幣の情報を調べてみることから始めてみましょう。