スイス射撃祭記念銀貨・金貨について解説!人気の理由やコインの種類

2021/2/26|著者: アンティークコインタイムズ編集部

 

スイス射撃祭記念コインはスイスで定期的に行われる射撃祭を記念して発行されるコインのことです。1842年に初めて発行されて以来、紆余曲折を経ながら今日までスイスの射撃文化を表すコインとして世界的にも人気を博してきました。初期の頃のスイス射撃祭コインは銀貨でしたが、近年になってからは銀貨と金貨の両方が発行されてきました。スイス射撃祭コインの人気の理由はなんなのか解説し、具体的にどのようなコインがあるのか紹介したいと思います。

 

スイス射撃祭とは

スイス射撃祭とは、スイスで定期的に開かれる射撃競技の大会のことです。「射撃祭」という言葉からは、なかなか激しいものが伝わってきますが、永世中立国であるスイスには18~34歳までの男性に対し兵役制度があり、兵役に就くと銃を与えられことになっています。そのため、2017年の統計を見ると、スイスの銃所有率は27.6%と、約4人に1人が銃をもっていることがわかります。

 

ちなみに日本の銃所有率は0.3%ですから、スイスでは銃がいかに身近な存在であるかがわかると思います。そうした社会的な理由から射撃を楽しむ人が多く、そのために記念コインが発行されるほどの大事なイベント「射撃祭」が開催されるようになりました。

 

参考:永世中立国スイス、銃所有率が極めて高いのになぜ乱射事件が起きないのか|BUSINESS INSIDER / Estimated number of civilian guns per capita by country|Wikipedia

 

最初の射撃祭コイン(14世紀)

射撃祭の歴史は長く、その始まりを辿ると14世紀にさかのぼります。ただ、スイス射撃祭コインが最初に発行されたのは、それから500年ほどたった1842年でした。この年の射撃祭は、クールという町で開催され、スイス射撃祭コインの発行も国ではなく、クールが所属する県が発行しました。

 

最初のスイス射撃祭コインは4フラン銀貨で、直径は40㎜。発行数は、当初6000枚でしが、そのうち1744枚は国によって廃棄され溶解されてしまったため、実際に世に出たものは4256枚でした。

 

コインの表には、スイスの紋章が中央に彫刻され、その背後に4本の旗と2本の銃が彫られています。そして円周上に「連邦フリー射撃クール大会 1842」という言葉がドイツ語で刻まれています。一方、コインの裏には3つの楕円形の盾が描かれ、それぞれの盾には灰色同盟、ゴッテスハウス同盟、十裁判区同盟の紋章が表現されています。円周上にはコインを発行したグラバンデン県の名前と4フランの文字が刻まれています。

 

ラテン通貨同盟の影響で1885年に停止

1842年から発行されるようになったスイス射撃祭コインでしたが、その後射撃祭は連邦射撃祭として隔年で全国大会が開催されるようになり、それに伴ってコインも同じ頻度で発行されるようになりました。

 

それから時が流れ、ヨーロッパの事情も変わり、それまでのスイス独自の貨幣制度に代わって、フランスを中心としたラテン通貨同盟が結成されました。この同盟は、参加国で使われている通貨の品質を規定する国際条約を定めていました。ほとんどの貨幣は問題なかったのですが、当時流通していたスイス射撃祭 コインの価値が問い正されるようになりました。

 

そのため、スイス政府は1885年にスイス射撃祭コインの発行を停止することにしたのです。

 

1984年にスイス射撃祭コインが復活

1885年に製造停止になったスイス射撃祭コインは、その後、99年の空白を経て1984年に復活することになります。復活するきっかけとなったのは、チューリッヒでコイン商を営んでいたハーマン・ハバリングがスイス射撃祭コインの歴史的な価値を再発見したことでした。

 

この再発見により、ハバリングは連邦財務局や射撃祭協会と話し合い、結果として1984年にスイス射撃祭コインの再発行が実現したのです。それ以来この記念コインは射撃祭が開催される度に発行されています。ただし、アンティークコインとしては1842年から1939年の間に発行されたものになります。

 

スイス射撃祭コインには、銀貨と金貨がありますが、アンティークコインとなっているのが銀貨であり、金貨が発行されるようになったのは1934年以降で、銀貨も金貨もそのほとんどはモダンコインに属します。

 

スイス射撃祭銀貨一覧

アンティークコインと言われるスイス射撃祭コインはそのすべてが銀貨です。最初に発行された1842年の銀貨については、すでに詳細を紹介したので、ここではその後に発行されたもののうち19世紀に出された銀貨をいくつかご紹介します。

 

なお、第1次、第2次世界大戦中に開催された連邦射撃祭では100フランの金貨と5フランの銀貨の2種類が発行されました。両方とも共通のデザインが採用されています。

 

1847年グラルス射撃祭記念40バッツェン銀貨

1847年グラルス射撃祭記念銀貨、は直径40㎜の額面40バッツェンのコインです。当時の発行数は3200枚でしたが、1852年に1023枚溶解廃棄されたため、現存しているのは2177枚になります。コインの表にはスイスの国旗に使われている白い十字の絵が彫られ、その周りに旗と銃が置かれています。裏には、「連邦自由射撃祭 グラルス大会 1847」の言葉がドイツ語で刻まれています。中央に彫られた人物は、聖職者のように見えますが、実際に誰であるかは不明です。

 

1855年ソロツッルン射撃祭記念5フラン銀貨

1855年ソロツッルン射撃祭記念5フラン銀貨は直径30mmのコインです。コインの表にはシンプルに5フランの文字が刻まれ、裏には連邦の紋章を付けたスイスの女神「ヘルベティア」が左に向かって指を差す姿が彫られています。

このデザインは当時流通していた5フランの標準コインと同じですが、スイス射撃祭 コインではエッジに「連邦射撃祭ソロツッルン大会 1855」の文字が刻まれていることで、その違いがわかるようになっています。発行数は3000枚です。

 

1857年ベルン射撃祭記念5フラン銀貨

1857年にベルンで開催された射撃祭を記念して発行された5フラン銀貨は、直径が37mmあり、この年から大き目の銀貨に代わっています。コインの表の中央には銃を持つ兵隊の立ち姿が彫刻され、円周に沿って「栄誉こそが私の最高の目的」という内容の文字がドイツ語で刻まれています。

コインの裏には、中央に配置されたスイスの紋章の上に十字型に重ねられた2つの銃が彫られ、円周にそって「連邦射撃祭ソロツッルン大会 1857」の文字が刻まれています。発行部数は5191枚です。

 

1863年ラ・ショウ・ドフォン射撃祭記念5フラン銀貨

1863年のスイス射撃祭はラ・ショウ・ドフォンで開催され、直径37㎜の5フラン銀貨が発行されました。コインの表のデザインは、1855年発行のスイス射撃祭 コインと同じで、連邦の紋章を付けたスイスの女神「ヘルベティア」が左に向かって指を差す姿が彫られています。裏には州の紋章が中央に置かれその背後に旗と銃がそれぞれ2本ずつ配置されています。この銀貨は6000枚発行されました。

 

1872年チューリッヒ射撃祭記念5フラン銀貨

1872年の射撃祭はチューリッヒで開催され、前大会と同様に5フランの記念銀貨が発行されました。コインの表にはチューリッヒを代表する女神の像が中央に置かれています。右手をこの都市を象徴する盾の上に置き、左手を高く上げているのが特徴です。裏には中央に置かれたスイスの紋章の背後に2本の銃が置かれています。発行数は10,000枚です。

 

1883年ルガノ射撃祭記念5フラン銀貨

これまで紹介したスイス射撃祭銀貨の発行数で示される通り、発行数は大会ごとに増えています。1883年にルガノで開かれた射撃祭の5フラン銀貨は30,000枚発行されました。この銀貨の表には、ヘルベティアが川の神である「ティチーノ」といっしょに、1882年に開通したゴッタルド鉄道のトンネルの上に座っている姿が彫刻されています。トンネルの中からは汽車が出てくる様子が描かれています。裏面には、ルガノの町と湖が背景に描かれ、その前に都市の盾と銃、横断幕などが彫り込まれ、かなり複雑な構成になっていることがわかります。

 

スイス射撃祭のモダンコイン

スイス射撃祭コインはそのほとんどが銀貨のアンティークコインですが、1934年に開かれた射撃祭からは銀貨と金貨両方が発行されるようになりました。そしてしばらく時を置いて、1984年からは毎年、銀貨と金貨のモダンコインが発行されてきました。

 

1934年・1939年のスイス射撃祭金貨・銀貨・コイン

1934年と1939年の大会では、銀貨は5フラン、金貨は100フランの額面が与えられ発行されました。銀貨は両年ともに40,000枚発行されましたが、金貨の発行数は1934年が2000枚、1939年が6000枚でした。この両年に発行された銀貨の直径は、これ以前に発行された銀貨の直径37㎜から31㎜に縮小されています。



スイス射撃祭 モダンコイン

 

1939年の後、コインに代わってメダルが発行された時期がありましたが、1984年からは、スイス各地で行われたさまざまな射撃祭を記念して、毎年銀貨と金貨が発行されるようになりました。ただし2016~2019年は銀貨のみです。いわゆるスイス射撃祭 のモダンコイン版の発行です。このモダンコインにおいては、銀貨は50フラン(1999年のみ20フラン)、金貨は1994年までが1000フラン、それ以降は500フラン(ただし1999年は200フラン)の額面となっています。直近のスイス射撃祭は、2020年に予定されていましたが、コロナウィルスにより中止となり、2021年に延期されました。そのため、記念コインの発行年も2021年になっています。

 

スイス射撃祭記念コインについて知ろう

1842年の最初の発行から始まったスイス射撃祭コイン。アンティークコインと呼ばれる初期の頃のコインは銀貨でしたが、1934年から金貨も併せて発行されるようになりました。

ヨーロッパの複雑な事情を反映して、途中発行が停止されたこともありましたが、見事にカンバックを果たしたスイス射撃祭コイン。この記念コインにはスイスの社会的な事情と歴史がぎっしり詰まっています。ぜひスイス独特のこの記念コインについてさらに知ってみてください。

 

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タグ: その他コイン, モダンコイン

アンティークコインタイムズ編集部

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