今探しておきたいモダンコイン5種

 

以前に公開したこのモダンコインの記事を見逃してしまった人のために、再度掲載することにした。エンジョイ!

チャールズ・モーガン、ハバード・ウォーカー著

今すぐ探しておきたいモダンコイン5種を、リストにまとめてみた。現在のところ価格は手ごろだが、将来に価値が上がるかもしれない。

 

 

1968ディープカメオ・プルーフ・クォーター(25セント硬貨) 

3年間の製造休止後、1968年に再導入されたプルーフセット。米国造幣局は販売価格を以前の2.10ドルから 5.00ドルに引き上げたが、コインそのものは素材的には値打ちの低いものとなった。(ちなみに、最後のシルバーコインであるケネディー・ハーフダラーでさえ、銀の含有度は40パーセントしかなかった)。 5年間で変化したことと言えば、パッケージの素材がより優れたものになったという点か。以前は茶封筒や薄いビニールで包装されているだけだったが、これが見栄えのいい硬質プラスチックのディスプレイケースに変更された。より良い素材のパッケージにより、新たに導入されたプルーフセットの保存性は向上されたはずだったが、実際はそう単純ではなかった。このプラスチックケースは気密でなかったため、64年以前に発行されたプルーフに比べ、この時代のコインは酸化、曇り、トーンが生じやすくなってしまったのが実状だ。

再導入されたセットには、シルバー・ケネディ・ハーフダラーのようなカメオ硬貨をもっと製造しようとした造幣局の努力が見られる。プルーフセットの中に、優れた梨地カメオ図案のモダンコインを見かけることもあるが、あまり一般的ではない。特に、1968年プルーフ・クォーター(25セント硬貨)おいては良いものはまれだ。

PCGSがディープカメオ(DCAM)と格付した1968年版クォーターは200枚未満。その内、PR69DCAMグレードは25枚未満だ。これらのモダンコインは、オークションで通常2,300ドル以上で取引される。この数は、すべてのモダンプルーフは第三者鑑定会社に鑑定を依頼すれば、PR69DCAMと認定されると思っていた人には意外なことかもしれない。造幣局が顧客の需要に応じ世界クラスの製品を提供しようと試行錯誤したこの年代。まさにプルーフ製造の過渡期を示唆していると言える。

PR68DCAMグレードの1968-Sクォーターは100~200ドル、PR67DCAMであれば 50~100ドル程度で売られている。ありふれた1968年プルーフセットを凌駕するモダンコインだ。比較的安く手に入れられること考えれば(1968プルーフセットはハーフダラーの素材銀の額面で販売される)、見ておいて損はない。

考慮すべきバラエティー:1968年のプルーフセットはバラエティーに富んでいる。これは、造幣局が300万セット以上あった注文に必死に対応しようとしたことによると思われる。 DDO(表面ダブルダイ)、DDR(裏面ダブルダイ)、またはRPM(再刻印ミントマーク)のものを探しておくといいだろう。

 

フルステップ・ジェファーソン・ニッケル(5セント硬貨):1965-70年

「ジェファーソン・ニッケルセットは、究極のビギナー向けセットだ!」というコメント。ストライクやバッグマーク(当り傷)にこだわらないなら確かにそうかもしれない。本シリーズを専門とする多くのスペシャリストを、長年に渡り大いに喜ばせたり、もどかしい思いをさせたりし続けてきたジェファーソン・ニッケル。その理由は、1965年から1970年にかけて製造されたコインにフル・ステップ(全階段:裏側のモンティチェロの階段部分がくっきりしているもの)バージョンを見つけるのが困難なためだ。

Choice BUグレードでさえ、1965フル・ステップ・ジェファーソン(スペシャル・ミントセットを除く)は5,000ドルもする。1968-Dもそうだ。比較的財布に優しい1968-Sや1970-Sでさえ、MS-63またはMS-64グレードであれば数百ドルで売れる。Gemグレードであれば、千ドル以上だ。総じて、ここ6年間で第三者鑑定会社が見つけたフル・ステップ・ジェファーソンは、200枚にもおよばない。

この期間に発行されたコインシリーズには、いくつか共通の問題点がある。ありがちな問題点は、見栄えがしない、輝きに欠ける、刻印がはっきりしない等だ。さらに、フル・ステップ・ジェファーソンの定義は、発行年、ミント(造幣所)によっても異なる。階段数が6のものもあれば、5のものもある。頭を抱えてしまう状況だ。

それだけでない。流通目的で造幣された5セント硬貨の大半は傷が多くついているため、高額査定されにくい。他のコインに比べ、ジェファーソン・ニッケルはスリ傷等が目立ちやすいデザインになっている。表面はジェファーソンの肖像がほぼ全体を占めているため、傷の大半はフォーカルエリアに現れてしまう。裏面に配置ミスがあれば、この希少な高価値のフル・ステップ・コインを見つけたという希望がその場で打ち砕かれてしまう。

いいグレードのジェファーソン・ニッケルを見つけるのは無理と、落胆してしまっただろうか?諦めるのはまだ早い。障壁は高いかもしれないが、フル・ステップ・ジェファーソンはまだ確実に存在している。ひたすら探し続けるのみだ。これらの一般的なモダンコインは、鑑定書が付いていない限り付加価値はない。ということは、鑑定書無しのコインを大量に手に入れたとしても、それほど金はかからない。寒い冬の日、鑑定ライトをコインに照らしステップを数えるというのもなかなか魅力的なものではないだろうか。もしかすると、本当に優れたニッケルを見つけ出せるかもしれない。

購入すべき書籍:バーナード・ナージェンガスト(Bernard Nagengast)は素晴らしいコイン研究家だ。彼の本「The Jefferson Nickel Analyst(2002年発行第2版)」は、この見つけにくいジェファーソン・ニッケルを探し当てるためのバイブルとも言える。5ステップ、6ステップ・ジェファーソン・ニッケルを見つけるのに生涯費やすつもりはないとしても、他のモダンコインを真剣に集めたいと考えているなら、ナージェンガストのアプローチから学べることは数多くある。お薦めだ。

 

1977-Sダブルダイ・アイゼンハワー・ダラー・プルーフ

補足:本記事執筆者の一人のチャールズは、アイク・グループ(Ike Group)のメンバーである。(アイク・グループは、アイゼンハワー・ダラー研究グループ。)

まだ大幅には知られていない、素晴らしいコインの現場レベルの知識を得るチャンスをおすそ分けしたい。アイク・グループメンバーのアンディ・オスカム(Andy Oskam)によると、この新たに発見されたアイク・ダラー(注:アイゼンハワー・ダラーはアイク・ダラーのニックネームで呼ばれている)には、コインの表面に二重プレスエラー(ダブルダイ)があるとのことだ。ボルティモアで開催された2012年ウィットマン・エキスポで、ディーラーがアンディに見せたものだ。コインのIN GOD WE TRUSTのモットーが二重になっていて、左側の文字ははっきりとしているが、刻印が上下にずれているそうだ。

このずれはかなり大きく、裸眼でも確認できるとのこと。なぜ今までコレクターに気づかれなかったのか不思議だ。現在「Cherrypicker's Guide」に掲載されているアイク・ダブルダイが平凡見えてしまうほどの、だれの目にも明らかなほどのはっきりとした二重ずれだそうだ。これまでたった一枚しか見つかっていないことを考慮すれば、近所のコインショップでこのバージョンを見つけることができれば、いい金になることは間違いなしだ。

現在アイク・グループは、発刊予定のアイゼンハワー・ダラー・シリーズ・ガイドに載せるために、この新たに発見されたコインを入手しようとしている。もしダブルダイ・コインが次々見つることになれば、完全版アイク・レジストリーセットに1977-S DDO アイク・プルーフが不可欠になることは時間の問題だ。そうなったとすれば、他のコレクターたちも探し始めることは間違いない。後になって「知らなかったと」文句言わないでほしい。

1997-Sプルーフについて:1977-Sプルーフは、1977年版のプルーフセットに含まれている。パッと見には似たコインが市場に溢れているが、カメオが梨地で分厚い1977アイク・プルーフは、長期的な視点を持って保持しておきたいものだ。1978年以降、造幣局がプルーフ鋳造の製造過程を変更したことにより、一貫してカメオのコントラスト(凸凹)ははっきりするようになったが、1971から1977年にかけてのアイク・プルーフは、スラブに記載されている第三者鑑定会社によるグレードが何であっても、実際は当たり外れが激しい。

 

ハイグレードの1981-Sビジネス・ストライク・スーザン・B・アンソニー・ダラー

スーザン・B・アンソニー・ダラーのワイドリム(広縁)バージョン、及び1979、1981タイプ2・プルーフ。これらのバージョンに関するナンセンスはもう忘れてほしい。見識のあるこのシリーズのコレクターなら、優れた1981-S ビジネス・ストライクを見つけるのは困難だと痛感しているはずだ。

スーザン・B・アンソニー・ダラーは、流通の目的ではなくミントセットのためだけに製造された。サンフランシスコで造幣され、パッケージするためにデンバーへ配送されたが、この行程はコインには適していなかったようだ。大半のBU 1981-S スーザン・B・アンソニー・ダラーはMS-64かそれ以下に格付けされている。とは言え、丹念に探し続ければ、MS-65グレードを見つけることも不可能ではない。もしMS-66グレードのものを見つけることができればさらに高価格を期待できる。このグレードのものは500ドル~600ドルで売買されている。

もし未だ一枚しか見つかっていないMS-67グレードを発見すれば、無限の可能性を秘めているといっても過言でないだろう。現存する唯一のMS-67は、アングルマイヤー(Rob Anglemeir)に発見され、以後ゴーラン(David Golan)、マーフィー(Gabriel Murphy)と指折りのコレクターの手を経た由緒正しさだ。現在は、PCGSメンバーの“haletj”が所有するナンバーワン1981年ミントセット・レジストリーセットに入れられている。実際に目にすると、このコインは67グレードの模範例とは言い難い。ということは、より優れた67グレードを見つければ、10,000ドル以上値が付く可能性もある。

本来なら、サカガウィア・ゴールデン・ダラー発売開始一年前に、スーザン・B・アンソニー・ダラーシリーズは1981年版を最後に製造中止される予定だった。ところが突然予想外に起こった硬貨不足のため、スーザン・B・アンソニー・ダラーは1999年に再度導入さることとなった。現在のモダンコインシリーズに対する関心は、最初に製造された時よりごくわずか高まっている程度だ。ところが、MS-66以上のグレードのコインに関しては、発行年、ミントマークにかかわらず人気が上昇している。一般的な収集家はまだ知らないかもしれないが、こういったシリーズこそが将来コレクションを発展させるのに不可欠なものである。額面価格に若干プレミアムの乗せた程度で、優れたコインを入手することはまだまだ可能だ。とは言え、一旦販売されているすべてのミントセットが買いつくされてしまえば、簡単に手に入れることは難しくなるだろう。今すぐ探し始めてみよう。

300万セット以上発行されたことを考えれば、1981スーザン・B・アンソニー・ダラーをレアものと勘違いする人はいないと思う。製造枚数が希少性を決めるポイントであると言う人もいるが、私自身としては、これはコイン収集に精通していない人相手にちょっと高めに売ろうとするディーラーのセールストークだと思っている。もし1981スーザン・B・アンソニー・ダラーの希少性が高まってほしいと思うのなら、状態がそれほど良くないコインをバンバン使ってしまうべきだ。コレクションに値しないコインの間引きと新コレクターの誘引を兼ね、一石二鳥ではないだろうか。将来に向けた収益向上策になるかもしれない。

 

2008年シルバーイーグル – 2007年版の裏面が使用されているバラエティー

 アメリカンシルバーイーグルは、コイン収集を趣味にしている人にとっても、そうでない人にとっても人気のコインだ。これは、このバラエティー(正しく言えばデザイン移行時のエラーコイン)に関して言えば、良いことでもあり、悪いことでもある。良い面は、趣味のコイン収集を目的としない地金ディーラーや収集家は、この名うてのバラエティーを認識していない可能性が高いということだ。逆に悪い面は、2007年版の極印をそのまま裏面に使用してしまった2008年シルバーイーグルの相当数(推定45,000枚ほど)は、コレクターの手に渡っておらず、地金投資家に保有されていると思われることだ。

 

現在、約6,000枚のみがこのバラエティーとして認定されている。大部分は見つけ出されるのを待っている状態だ。

正規の2008年シルバーイーグルと裏面が2007年版のシルバーイーグルを、裸眼でも区別できるポイントはいくつかある。まず、多数のコインガイドは、UNITED STATES OF AMERICAのUのフォントが違っていると指摘している。2007年版のUの上部にはセリフと呼ばれる短い水平線が付いているが、2008年版のUの上部には無く、代わりにUの右下部に小文字のuのような下に伸ばした直線が付いている。レタリングの違いはこれだけではない。2008年版では完全な表記リニューアルが行われている。2007年版の“1 OZ”の1の下部にも際立つセリフが有り、2008年版の1にはこの線が欠けている

2007年版ではイーグル紋章の上部の星の間のスペースが広めだが、2008年版の星はやや大きめのため、星同士がくっついているように見える。さらに、下部に位置するSILVERとONEの間にある波線符号(~)を見てほしい。2007年版の角度は鋭いが、2008年版のはもっと丸みがあり波状になっている。

現在のところ、地金型コインに一般的なMS-69グレードは、300ドルから500ドルで売買されている。もしMS-70であれば、1000ドル近くになるが、この値段で取引できるチャンスは低くなってきている。これは、10枚のMS-69の内、MS-70が1枚の割合で見つかるようになってきているからだ。もし幸運にもMS-70グレードのコインを見つけることができたなら、高価格で取引できるうちに売却することを薦める。

魅力的なトーンのものであれば、最近のオークション落札価格を大幅に上回る結果を望めるだろう。

メモ:もしアメリカン・イーグルコインや地金型コイン全般に興味を持っているなら、ジョン・メルカンティ著の「Whitman American Silver Eagles: A Guide to the U.S. Bullion Coin Program (2012)」をチェックすべきだ。この本のレビューのリンクはこちら。ちなみに本記事執筆者のチャールズは、ウィットマン・エキスポでメルカンティ氏と話す機会があり、サイン入りの本を手に入れ喜んでいた。

 

 

 

参考文献・資料:

Nagengast, Bernard A.著、 「The Jefferson Nickel Analyst – 第2版」、 E & K Cointainer Co.出版、2002年印刷

http://www.ikegroup.info/

Fivaz, Bill、J. T. Stanton著、「Cherrypicker’s Guide to Rare Die Varieties of United States Coins (Vol. II)」、Ken Potter編集、Atlanta: Whitman Publishing, LLC出版、2011年印刷

Yeoman, R. S著、「A Guide Book of United States Coins 2013」、 Kenneth Bressett編集、 Atlanta: Whitman Publishing, LLC出版、2012年印刷

 

豆知識:

グレイ・レディー:今日、ファースト・レディー(大統領夫人)の役割はどういったものであるかはっきりしているが、以前は必ずしもそうではなかった。例えば、アナ・ハリソン。アメリカ歴史上最老のファースト・レディーであったアナ・ハリソンは、病気のため、夫のウィリアム・ヘンリー・ハリソン大統領とともにワシントンに住むことはなかった。未亡人であった義娘のジェーンが、代わりにファースト・レディーの役目を務めた。アナ・ハリソンは、2009年に発行されたファースト・スパウス・10ドル・ゴールド・ブリオン・プログラムのデザインに登場した、5人のファースト・レディーの内の一人だ。

6:6はUS記念コインの裏面に言葉が引用された人の数だ。エマ・ラザルス(1986自由の女神ダラー)、ドワイト・D・アイゼンハワー(1991-1995第二次世界大戦ダラー)、ジェームス・マディソン(1993ビル・オブ・ライツ・5ドル)、ジョシュア・チェンバレン(1995南北戦争ダラー)、ユージーン・ケネディ・シュリバー(1995スペシャル・オリンピック・ダラー)、アブラハム・リンカーン(2009アブラハム・リンカーン・ダラー)。個人的には引用文はコインよりもどちらかといえばメダルに向きだと思うが、これはモダンコインシリーズによく見かけるトレンドだ。

スプリンクル:1830年代、ケンタッキー農場主のジョサイア・スプリンクルは、自分でシルバーダラーを造幣し流通させた。地元の商店街はこのコインで取引きに何も問題を感じなかったようだ。、実際の銀貨と同じかそれ以上の純度の銀を使っていたからだと思える。アメリカ歴史上ではほかにもこのようなDIYコインが見られる。最終的には、政府はスプリンクル氏を偽コインを流通させたことで訴訟したが、地元の裁判官や陪審はすべてについて無罪と判断した。残念なことに、このスプリンクル・ダラーは現存しない。このコインに関しては、2012年版の「American Numismatic Biographies(アメリカ貨幣伝記)」(ピート・スミス著)で読むことができる。

 

本記事は、『COINWEEK』の翻訳記事です(掲載許可有り)。元記事は以下のリンクより確認できます。

参考:https://coinweek.com/modern-coins/five-modern-coins-you-should-be-looking-for-right-now/