南米ペルーを代表する大型金貨「ペルー 100ソル金貨」、その特徴とは?時代背景を解説し同種コインを紹介!

ペルー 100ソル金貨は1950年から1970年にかけてペルーで発行された大型金貨です。大きさもさることながら金の含有量90%という高い金品位と紋章と女神を描いた美しいデザインが特徴的です。ペルー 100ソル金貨がどのような時代背景の下に発行されたのか、当時のペルーの社会情勢と貨幣単位の変遷について詳しく解説し、併せて同種のコインを紹介します。

ペルー 100ソル金貨

ペルー100ソル金貨 表裏

基本データ

コイン名 ペルー 100ソル 女神坐像金貨
通称 ペルー100ソル
発行年 1950年〜1970年
ペルー
額面 100ソル
種類 金貨
素材
発行枚数 90,824枚
品位 Au 900
直径 37 mm
重さ 46.80 g
統治者 -
デザイナー -
KM #231
表面のデザイン 女神坐像とレジェンド、年号
表面の刻印 CIEN SOLOS ORO GRS.42.1264 DE ORO FINO 年号
裏面のデザイン 国章とレジェンド、重量と年号
裏面の刻印 PESOS : GRS. 46.8071 - REPUBLICA PERUANA - NUEVEDECIMOSFINO LIMA(ペソ、重量、ペルー共和国)
エッジのタイプ リーデッド
エッジの刻印 -

 

ペルー 100ソル金貨とは?

ペルー 100ソル金貨は20世紀中頃、南米ペルーで発行された金貨です。どのような特徴があるのか見ていきましょう。

ペルー 100ソル金貨の形状

ペルー 100ソル金貨はペルーの首都リマで1950から1970年にかけて発行されました。中には年号によって流通用と未流通のコインがあります。直径37㎜、厚さ3㎜、重さ46.8gというずっしりとした重量感のある大型コインです。それほどまでの大きさにもかかわらず、金の含有量は42.1g、つまり90%にも及びます。それだけに、ゴールドの価値が上昇している現在、注目を浴びつつある金貨だと言えるでしょう。発行枚数は全部で約90,000枚。20年間継続的に発行されたことを考えると、決して多い数ではありません。最も少ないのが1952年の126枚、最も多いのが1965年の23,000枚です。

表面のデザイン

ペルー100ソル金貨 表面

ペルー 100ソル金貨の裏面には女神の坐像が描かれています。女神と言えばオーストリア発行の100コロナ金貨の「雲上の女神」が有名ですが、ペルー 100ソル金貨に描かれた女神像も勝るとも劣らない美しいデザインとなっています。そのため「第二の雲上の女神」と呼ばれることもあります。ペルー 100ソル金貨の女神は左手に笏を持ち、右手を盾の上に置いています。この盾は南米独立の象徴であるソル・デ・マヨ(5月の太陽)のデザインです。

そして向かって右のスペースにはコラム(飾柱)が描かれています。柱の上にはリースが置かれ、下の部分にスペイン語で自由を意味する「LIBERTAD」の文字が書かれたリボンがまかれています。

裏面のデザイン

ペルー100ソル 裏面

表面には国の紋章が描かれ、その傍らにオリーブと月桂樹が添えられています。紋章の中心となるのは3つの部分からできている盾です。盾の左上部に描かれた動物は国を代表するビクーニャ(アルパカやラマと同種)です。右上部に描かれているのはペルーの国家カンツゥータ(キナ)です。そしてその下にたくさんの金貨の絵が見えます。これはペルーの豊かな地下資源を象徴したものです。このことからも、ペルー 100ソル金貨に90%もの多量なゴールドが使われている理由が理解できるのではないでしょうか。紋章ではこの盾の上部にオークの枝で作った冠が描かれています。これは、勝利と栄光を象徴するものです。

 

ペルー 100ソル金貨が作られた当時の時代背景

ペルー 100ソル金貨が作られた20世紀半ば、ペルーはどのような時代だったのでしょうか。詳しい内容を解説していきます。

軍事政権の発足

ペルーのクーデター

▲ペルーのクーデター(1948年)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Golpe_de_Estado_en_Per%C3%BA_de_1948.png

 

ペルー 100ソル金貨が発行された1950年という年は、当時警察大臣を務めていたマヌエル・オドリーア将軍がクーデターを起こし軍事政権を確立してから2年目の年です。残念ながら、ペルー 100ソル金貨が具体的に何を記念して発行されたのかという記述を見つけることはできなかったのですが、新しくできた軍事政権の誕生ということがその背景にあったことは確かです。このことは、女神をモチーフとして使い「自由」という言葉を刻んだペルー 100ソル金貨の主旨とは一見相反するようにも見えます。けれどもクーデターにより権力を掌握したマヌエル・オドリーアは、民主的な政治家としても知られているのです。

異色の政治家マヌエル・オドリーア

マヌエル・オドーリア

▲マヌエル・オドリーア

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Manuel_Odr%C3%ADa_1948.png

 

オドリーアが権力を掌握したのは1948年ですが、その2年後、オドリーアは大統領を辞職しセノン・ノリエガを傀儡の大統領として擁立します。そして、オドリーア自身今度は民間人として再度大統領に立候補。ただし、この時立候補したのは彼だけということで、民間人として大統領に再就任することができました。今では考えられないようなやり方ですね。

民間人として大統領に就任後、オドリーアは、貧しい人や下層階級の人の味方となり、多くの社会・経済政策を実施していきました。その一方で、人権を抑圧し、汚職の蔓延を招いてしまいました。当時のペルーの市民は、オドリーアがそのまま独裁政治を続けていくのではと恐れたと言われています。ところが、そうした予想に反し、1956年、オドリーアは他党を公認し選挙を実施したのです。当然、誰もが驚きました。しかもこの時、オドリーアは選挙に立候補しませんでした。オドリーアが再び政界に戻ったのは1962年。この年総選挙が行われ、再度立候補したオドリーアは無事当選し議員に選ばれました。ただし、大統領選にも立候補したものの、この時は当選を果たすことができませんでした。

ペルーの貨幣単位の変遷

ペルー 100ソル金貨の貨幣単位である「ソル」はラテン語の「Solidus」から来ています。英語では「Solid」、つまり「硬い、個体」などを意味します。また、スペイン語では太陽の意味にもなります。ソルは現在使われている単位ですが、ペルーではこれまで貨幣単位が何度か変わりました。

16~18世紀は、スペイン領であったことから、スペイン帝国の貨幣が使われていました。1822年〜1863年には「リアル(Real)」という単位が使われ、1863~1985年に「ソル(Sol)」になりました。ところが、1986年〜1991年にはインカ帝国の太陽の神を意味する「インティ(Inti)」に変わりました。そして 1991年に再び「ソル(Sol)」に戻り現在に至っています

 

ペルー 100ソル金貨の種類・その他のコイン

ペルー 100ソル金貨と同じデザインをあしらったコインには、その他5・10・20・50ソルの4種類の金貨があります。ただしエッジに沿って書いてある文字と発行期間はコイン毎に異なっています。これらの金貨も非流通貨幣です。

ペルー 5ソル金貨

ペルー5ソル金貨

ペルー 5ソルコインは直径14㎜、重量2.34gの金貨です。

発行期間1956年〜1969年。

ペルー 10ソル金貨

ペルー 10ソル金貨

ペルー 10ソルコインは直径18㎜、重量4.60gの金貨です。

発行期間は1956年〜1969年。

ペルー 20ソル金貨

ペルー20ソル金貨

ペルー 20ソルコインは直径23㎜、重量9.36gの金貨です。

発行期間は1950年〜1969年。

ペルー50ソル金貨

ペルー50ソル金貨

ペルー  50ソルコインは直径28㎜、重量23.41gの金貨です。

発行期間は1950年〜1970年。

 

ペルー 100ソル金貨の価格推移

年号によって発行枚数がかなり上下するため、価格にばらつきがあります。状態の良いものを中心にオークションの落札結果をみてみましょう。

長年発行されている金貨のため、オークションなどで見かけて手に入れる際は状態と年号(発行枚数)をかならず確認しましょう。発行枚数が少ないものほど高値で落札される傾向にあります。

価格順にご紹介します。

MS66 1961年

MS66 1961年

2023年2月26日に$4,320で落札。

1961年の発行枚数枚。

総発行枚数が多いため、比較的手頃な価格帯でハイグレードが見つかります。

MS66 Prooflike 1950年

MS66 Prooflike 1950年

2022年12月8日に$10,200で落札。

MS64+ Prooflike 1952年

MS64+ Prooflike 1952年

2022年1月19日に$15,600で落札。

1952年の発行枚数126枚。

MS67 Prooflike 1950年

MS67 Prooflike 1950年

かなり状態の良い初期打ちと見られる。

2023年1月18日に$20,400ドルで落札。

1950年(初年号)の発行枚数1,176枚。

 

ペルー 100ソル金貨は豊かな資源と繁栄の象徴だった

ペルー 100ソル金貨は、直径37㎜、厚さ3㎜、重さ46.8gという重量感のある大型コインです。金の含有量90%という高品質のこの金貨は、1948年にマヌエル・オドリーア率いるクーデターにより誕生した軍事政権下で発行されました。興味深いことに、この軍事政権は後に自ら民主化に移行し、多くの社会・経済政策を実行しました。ペルーの豊かな金をふんだんに使った美しいデザインのペルー 100ソル金貨は、ペルーの豊かな資源と繁栄の時代を象徴するものとして、これからもその存在を維持していくことでしょう。

 

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