古代コイン収集ガイド

2020/8/18|著者: アンティークコインタイムズ編集部

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By ラッセル A. オーグスティン - 2019年12月30日

 AU Capital Managementの許可を得て、ジョー・ヤローク投稿

 

古代コインコレクションを蓄積することは困難だと感じているかもしれない。米国造幣局の存在は200年を少し超える程度だが、古典世界は21世紀にも及ぶ壮大さだ。収集するとしても、どこから初めてどこで終えるべきだろうか。

そこで我々の出番である。

古代コインは、博物館オーナーや億万長者でなくても収集することができる。収集可能なコレクションは多くあり、それぞれの価格に沿ったバリエーションを含めて、ここでは最も気軽に集められるものを紹介したい。セットによっては何十万ドルもするコインを含むものもあるが、中には同様に刺激的で歴史的でありながら、より手ごろな価格で入手可能なセットやサブセットも存在する。

 

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古代コインはトマス・ジェファーソン、ルイ14世、またはローマ帝国初代皇帝アウグストゥスのような顕著な歴史的人物によっても収集されてきたが、全ての人が楽しめるものだ。アメリカコインに比べると古代コイン市場はまだ成熟していないようで、製造枚数の少ないものや本源的価値の高いものでもアメリカコインより安く入手できる。さらにバリエーションが非常に多いため、何十年かけコツコツ収集でき、集めるセットが尽きるようなこともない。

例えば、12人のカエサル(ローマ皇帝)を描いたコインより知名度は低いが、これらの皇帝に引き続き在位した五賢帝のコインはどうだろうか。これらのコインは芸術性にも優れ前皇帝のものと同様歴史に富んでいるが、現在では一般的に手頃な価格で取引されている。古代コインの世界には、あらゆる通貨単位がある。中にはコレクションに独特な要素を加えられる大判のコインもある。これらのコインはサイズが大きいため、手打ちの素晴らしいディテールを鑑賞しやすい。

古代コインには膨大な数のコレクションやサブコレクションがあるが、希少性やクオリティが重要視される点はアメリカコイン収集と同様だ。どこから始めたら・・・と思うかもしれないが、私たちがすでに下調べを済ませておいたので心配しないでほしい。セットの潜在性のほか、財布にも優しく気後れせずに購入できるよう現在の市場価格までしっかりと調査済みだ。しなければならない事は、どの時代のコイン収集をしたいか決めるだけだ。

 

質の高いコインを選ぶ

いろいろなコインコレクションについて詳細に掘り下げる前に、まず古代コインコレクションを構築する上で留意しておきたい点をいくつか述べたい。まず、アメリカコインを集める際と同様、それぞれのグレードでの最良のものを探すことをおすすめしたい。コインが「極美品」であれば「美品」との価格差はこれほどであるといった断定的な比率などは存在しないが、一般的に、グレードが高くなれば値段も大幅に高くなる。場合によっては低いグレードのコインでも数百ドルで売れることもあるが、最高級のグレードであれば、同じタイプでもオークションで数千倍の価格で落札される可能性がある。

需要と供給が価格に影響を与えるということは、古代コインにおいても言える。古代コインの中で最も有名なもののひとつであるEID MAR(3月15日)デナリウス銀貨がその一例だ。ブルータス(ブルートゥス)のカエサル暗殺を記念したこのコインは、十万ドル以上で売買されることも稀ではない。入手可能なコインは100枚以下だが、欲しがっているコレクターが何千人もいることから必然的に価格が上昇している。コインが2,000年以上前のものだからといって、高価であるというわけではない。古代の歴史的地域で製造された非常に美しいコインでさえ、千ドル以下で買えるものは多くある。ディテールが素晴らしく、問題のないコンディションであってもだ。一般的なコインから超レアなコインまで、あらゆる種類のコインを以下で詳しく紹介したい。今どのようなものが入手可能であるか理解するのに、または将来手に入れたいものを見つけ出すその助けになると思う。

古代コインのグレードと保存状態が重要であるという点はアメリカコインと共通しているが、さらなる付加指標もいくつかある。古代コインは時が与える試練を数千年に渡り耐えてきたことから、アメリカのコインには見られない問題を伴っている可能性がある。鉱物等の沈着物、質の低い金属、さまざまなタイプの腐食などが古代コインには頻繁に見られる。できる限り問題のないコインを見つけるようおすすめする。アメリカコインを格付けする鑑定機関NGC(Numismatic Guaranty Corporation)は、最近古代コインの格付けを始めた。モダンコインと同様に、ディテール、ストライク、コインのクオリティ等を評価し、鑑定したコインをスラブに入れている。実際にコインに触れて確かめたい、数千年間無事存在してきたコインをスラブに入れるのは避けたいと思っている古代コインコレクターは多い。だが、NGCに認証されたという安心感を考えると、スラブ入りのものを集めるのは有益だと思う。画像のみを見てコインをネット購入する場合、コインのグレードに悪影響を与える問題の多くを見抜くのが難しい場合がある。古代コインはしばしば縁が研磨されていたり、それ以外の損傷があったりする。これらのコインの価格に大きく影響を与える問題は、実際に手に取って確認できない場合は見つけるのがほぼ不可能だ。NGCの専門家は直に個々のコインを調べ、縁の突起、グラフィティ、金属の変化、ダメージ等が無いか確かめ、それらの項目をスラブに記録している。とは言え、実際に購入するものはコインであり、スラブではない。これは古代コインに限らずモダンコインに対しても言えることだ。本当に信頼できるディーラーからのみ購入することを強くおすすめする。

ほぼ全ての硬貨のスタイルが一貫しているアメリカコインと異なり、古代コインには幅広いバラエティーの表面と裏面タイプがある。皇帝が描かれた独特なデザインのコインは文字通り数千以上だ。古代コインは、その時代を代表するアーティストの手により彫刻されている。彼らの見事な作品は、芸術性に劣るコインより高いプレミアが付く。またこれらの古代コインは、制御された機械を使用して製造されたのではなく手作業で鍛造されたため、刻印のディテールがはっきりしているか、正確に中心に打たれているかなどが価格に影響を与える。すべてのディテールがはっきりと見える、デザインが中心に打たれたコインを探すようすすめる。

古代コインは希少性を確認するのが困難だ。すべて手作業であったにもかかわらずかなりの数が作られており、大半の通貨単位において相当数のコインが現存している。時折埋蔵されていたコインが発見されることもあるので、既知のコイン数が調整されることもある。このようなことから、コインの希少性は確固たるものではない。とは言え、歴史的に見て大量に流通していたと分かっているコインや、ごく少数しか製造されなかったと知られているコインもある。ただ単純に希少と表示されているからといってそれを購入するということは避けたほうが無難だ。代わりに、先に述べた値段や長期的価値に影響を及ぼすポイントを押さえた上で購入してほしい。

古代コインを選ぶ際は、さまざまな事項を考慮しなくてはならない。できる限り多くのコインを見て、信頼できるディーラーの協力を得、質の高いコインを集めコレクションを拡大してほしい。

 

古代の時代

コインの造幣は、紀元前7世紀に始まった。リュディア(現トルコのアナトリア半島)で採掘されたエレクトロン(またはエレクトラム)と呼ばれる天然の金銀合金の塊に純度レベルを刻印したものが、一番古いコインであると言われている。これらの初期のコインの通貨単位はさまざまで、中には1グラムに満たないものや、16グラム以上のものもあった。エレクトロン貨の裏面には正方形がかなり深く打刻されている。これは、価値の低い金属にメッキしたものではないことを証明するためだ。コインの表面には、どの地域のコインであるかを識別するためのデザインが施された。コインが、それを発行する王国の技術と芸術性を世に伝えるためのツールとなった始まりだ。

何を集めるかを決める際、自分がどの歴史的地域に関心を持っているかをまず見極めるといいだろう。貨幣の世界で言う古代とは、紀元前700年からコンスタンティノープルがオスマン帝国軍の手に落ちた西暦1453年あたりまでを指す。

古代の2つの主要な文化はギリシャとローマだが、ギリシャの造幣はローマより数百年早く始まった。それぞれの芸術的スタイルは非常に異なる。収集できるコインのバリエーションもさまざまだ。どちらか一方にのみフォーカスするコレクターもいるが、複数の歴史的分野にまたがり幅広く集めるのも楽しいのではないかと思う。

ギリシャとローマ文化はほぼ同時代に存在していたため、歴史的、神話的な題材をいくつか共有している。このような点から、ひとつの包括的なテーマにフォーカスしながら両方の文化にまたがるコレクションを楽しむことも可能だ。逆に、ある皇帝、王朝、デザインなどひとつのテーマに絞り込み、より限定的なコレクションを好むコレクターも多くいる。以下で、コレクションを選ぶ際に役立つ情報をできる限り多く紹介したい。古代世界への旅をどこから始めたいかを決める助けになると思う。

 

古代ギリシャ

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古代ギリシャは、アルカイック期、クラシック期、ヘレニズム期の3つの主要な時代に大別されている。これらの期間にはいくつかオーバーラップする部分もあるが、それぞれ異なる特徴がある。アルカイック期はリュディアのエレクトロン・スターテル貨に始まり、独特の金や銀のコインが製造されるようになった時代だ。デザインはまだ洗練されておらず未熟に見えるかもしれないが、これは造幣のコンセプトがまだ発展していなかったことによる。

ギリシャ芸術の熟成と共に、クラシック期にはいくつかの最も美しいデザインの古代コインが製造された。彫刻師が各々の持つスキルを証明しようと努めたことによる。

ヘレニズム期はアレキサンダー大王の征服に始まり、ローマ帝国が古代世界の超大国として支配し始めたのを機に終焉した。

 

古代ローマ

ギリシャ芸術は、視覚的に最も魅力的であり美しい作品を世にもたらしたと言われている。しかし、ギリシャコインの収集はローマコインよりも難しい。これは言語の違いや短い歴史など、今日の世界との結びつきが薄いことに起因する。ローマコインにはラテン文字が使用されているので英語を話す人なら容易に読むことができるが、ギリシャコインでは象徴的な表現が一般的であった。また、ローマ帝国の歴史は広範囲に及び詳しく記録されており、コインも多くの支配者やさまざまなスタイルにあふれていて刺激的である。ローマの歴史は共和制、三頭政治、帝政と、3つの明確な時代に区別できる。初期のローマコインはアエス(Aes)と呼ばれる青銅のインゴット(鋳塊)で、金属の純度や通貨単位などは刻印されておらず、交換手段として取引ごとに計量されていた。だが取引量が増加するにつれ、効率を向上させ間接費を削減するための新しいシステムが必要となった。そこでデナリウス(denarius)銀貨がより手軽な取引手段として導入された。デナリウスの種類はとても多く、ローマ帝国の歴史を通し最も重要な通貨コインのひとつとして利用され続けた。ローマが最大の繁栄を見せたのは共和政時代だ。広大な領域を征服し、後に世界史上最大の大帝国となった。

ローマが大帝国へと発展する移行期であった三頭政治期は短かったが、この時代のリーダーは今日でも広く名が知られている。ユリウス・カエサル、ブルータス、マルクス・アントニウス、オクタヴィアヌスはこの時代の主要人物だ。新しい政府の設立に貢献し、古代ローマ帝国の比類なき長い歴史に名を刻んだ存在だ。

一般的に帝政ローマは、オクタヴィアヌスがアクティウムの海戦でクレオパトラとアントニウスを破ったのを始めとし、コンスタンティヌス大帝がローマ帝国の首都をコンスタンティノープルに移すまでの期間を指す。オクタヴィアヌスはアウグストゥス(尊厳なる者)の称号を得、初代ローマ皇帝として就任した。コインにも彼の肖像が刻印され、これが以降の皇帝の肖像を硬貨の表面に使用するローマコインのあり方の基盤を固めるものとなった。「12人のカエサル(12人のローマ皇帝がそれぞれ刻印されたコイン)」は疑う余地なく最も有名なものであるが、その他にも多くの歴代支配者のコインやコレクションが存在する。これらのコインをローマ帝国コインセットとして集めてもいいだろう。それぞれの皇帝は在位中に個性にあふれた図案のコインを数多く発行したので、幅広いデザインやタイプのコインを選び収集することが可能だ。帝国統治は混乱に満ちていたことから、多くの皇帝の治世は非常に短いものだった。そのためこれらの皇帝のコインは、長期統治者のものに比べて数が少ない。

 

ビザンツ帝国

帝国の首都がコンスタンティノープルに遷都された後、ローマ帝国はビザンツ帝国と呼ばれるようになった。ビザンツ帝国は西暦498年から1453年まで続いた。ビザンツ帝国のコインは種類が豊富なため、あらゆるタイプのコレクションが考えられる。当時のコインの価値が徐々に下落したことから、貴金属を使用した造幣がより大規模に行われるようになった。ビザンツ帝国の金貨は、ローマ帝国のものに比べ極めて手ごろな価格である。

 

他の文化

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古典古代ではないが、他にも素晴らしいコインを生み出した文化が数多くある。これらに限るわけではないが、中国、イスラム、パルティア、ベルベルなどがその例だ。これらの文化のコインについては記録が少なくそれ程調査もされていないが、あまりよく知られていない古代分野に興味を持つ進取の気性に富んだ収集家にうってつけかもしれない。

 

コレクション

さまざまな文化に関する一般的な歴史的知識を身に付けていただけただろうか。こちらではひとつひとつのコインについて詳しく説明し、コレクションを構築するためのあらゆるオプションを紹介したい。

 

タイプセット(コインのデザインやタイプによったコレクション)

集めすぎてしまうということは、コイン収集にありがちな問題とも言える。さほど好きではないコインを大量に集めずに、バリエーションを増やしセットを完成することが課題だ。古代コインの収集を始める際、まずはタイプセットから始めると自分はどのようなコインが好きなのかを学ぶきっかけになるかもしれない。多様なテーマを選ぶか、特定の皇帝や王朝に焦点を絞るかの柔軟性も高まる。古代コインは金属の種類も豊富で、通貨価値が何度も下落したことにより、コインのサイズや質はどこで造幣されたかによって異なる。完全版のコインセットを構築するには、多くの希少で高価なコインをも含め膨大な種類の通貨を集めなければならない。自由にカスタマイズできるタイプセットであれば、多く流通していたメジャーな通貨や、自分にとって意味のあるデザインのみを選ぶことができる。

 

ギリシャ・タイプセット

ギリシャコインには多くの通貨単位がありバラエティーに富んでいる。さらにこれらの通貨は、造幣された場所や時代によっても異なる。初期のギリシャコインは、重さの固定比率に基づいたものだった。シェケル(shekel)がその例だ。1シェケルの重さは大麦180粒の重さと一貫していたため、すべての取引は重量の測定により行われた。しかし金属の価値は常に変化していたため、後に標準が設定されるようになるまで最終重量も変動した。

最も人気のあるギリシャコインのひとつは、テトラドラクマ(tetradrachm)だ。テトラドラクマは銀貨で、重さは16〜17グラム、直径は28〜31ミリである。アメリカのハーフダラーと同じくらいの大きさだがもっとずっしりしている。テトラドラクマは種類に富み、サイズが大きくデザインも入り組んでいて魅力的である。

ギリシャコインの中で最大のペンテカイデカドラクマ(pentekaidekadrachm)は、テトラドラクマ4枚以上の重さだ。ヘミタルテモリオン(hemitartemorion)は最も小さく、192枚が1テトラドラクマに値する。ギリシャコインのサイズは主に2のべき乗(2n)に基づいており、中にはあまり流通していないものもあったが、ほとんどの分数を表すコインが存在していた。

ドラクマと異なる単位のスターテル(stater)も導入された。ギリシャコインの中で最大のダイスターテル(distater)金貨の重さはスターテルの2倍だ。ちなみに、スターテル金貨は古代コインの中で最も一般的に流通した通貨のひとつだった。ドラクマ銀貨に重量基準があったように、スターテルも重量により分割されていた。スターテルの半額のヘミスターテル(hemistater)から、1/12スターテルまで存在していた。

テトラカルコン(tetrachalkon)からヘミカルコン(hemichalkon)まで、青銅コインも流通していた。テトラカルコンの重さはヘミカルコンの8倍だ。

シチリアでは、重量単位はリトラ(litra)で表されていた。基本重量の0.057グラムに始まり、100倍までの重さの金貨やエレクトロン貨が存在した。スターテルやドラクマと同様に、最小は1/12リトラと、少数単位・倍数単位のリトラ貨があった。

ギリシャコインにはさまざまなデザインやタイプがあるため、非常に多様なコレクションを構築することができる。例えば、異なる通貨単位に分別し、見た目に優れたタイプを集めるのもいいだろう。まずはこの記事で後述するいくつかのテーマを参考に、コレクションの全体的な方向性を定めることをおすすめする。その後で、自分の好きなタイプのコインに絞り込むといいだろう。

 

ローマ・タイプセット

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ギリシャのコインと同様に、ローマコインには金、銀、エレクトロン、青銅、その他のあまり一般的ではない金属のものがあった。資金調達の必要性のため各タイプのコインの重量は時と共に変化し、帝国歴史の後期のコインは初期に比べ軽いものになった。中にはごく少数しか製造されなかった非常に希少なコインもあるため、すべての通貨単位を集めた完全版のタイプセットを構築することは難しいだろう。だが主要なタイプはよく集められており、ほとんどのオークションで見つけることができる。

 

アス(As:アスはローマの青銅コインだ。少数単位や倍数単位のものがあり、基本である1アスの1/24のものから5倍のものがあった。アウグストゥスの行ったローマの造幣制度改革後、アス貨は青銅ではなく銅貨に変更された。

 

デュポンディウス(dupondius:デュポンディウスはオリカルクムと呼ばれる青銅系の合金を使って製造された。1デュポンディウスは2アスに値する。

 

セステルティウス(sestertius:1セステルティウスはもともとは2.5アスとされていたが、アウグストゥスの造幣制度改革後、4アス、または2デュポンディウスと設定された。セステルティウスは非常に大型のコインで、重さは約26グラム、直径は33ミリ程だ。

 

デナリウス(denarius:デナリウスは銀で作られていた。初めの数世紀間は約4グラムの重さであったが、他のコインと同様以後軽量化された。偽造防止対策として、コインの縁にギザのあるデナリウスも発行された。現在見られる縁に多数の溝が彫られているタイプのコインの前身である。一般的に、1デナリウスは平均的な労働者の1日の賃金であったと思われている。

 

アントニニアヌス(Antoninianus:カラカラ帝により導入されたアントニニアヌスは2デナリウス相当の価値があった。アントニニアヌスに関しては、かなりのインフレを進行させたという逸話が残っている。導入初期のアントニニアヌス貨の銀含有量はデナリウスの1.5倍しかなかったので、結果、人々は銀を多く含むデナリウスを貯めこむようになった。銀不足のためアントニニアヌスの銀含有量は減らされ青銅と置き換えられ、造幣する度に価値が下がる一方になった。アントニニアヌスは非常に手に入れやすく、このコインの数十年間の移行やローマが経験したインフレの進行を表すタイプセットを構築することが可能だ。

 

アウレウス(Aureus:しばしばローマコインコレクションのセンターピースと見なされるアウレウス金貨。このコインはデナリウス銀貨25枚相当の価値があり、ローマの歴史を通し造幣され続けた。当初は7.6グラムから8.0グラムであったが、長い歴史の中幾度か質が低下することもあった。大半のアウレウス金貨は少なくとも7.1グラムであったが、西暦294年、ディオクレティアヌス帝により約5グラムに減少された。不変の人気を誇るアウレウス金貨は魅力にあふれている。質の低いコインは比較的安価だが、グレードの高いものや問題のないものには高い付加価値が付く。後にコンスタンティヌス1世により、アウレウス金貨は重さが約半分で直径が大きく薄いソリドゥス金貨に切り替えられた。

 

古代コインコレクション・ローマ皇帝

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12人のカエサルは、長い歴史を持つローマ帝国の始まりに過ぎない。これらの12人の皇帝については、第15代皇帝ハドリアヌスによりまとめられた情報をもとに別々に扱う。『皇帝伝』では初代12皇帝は1グループにまとめられているが、より集めやすいサブグループに分割することができる。

ユリウス・クラウディウス朝:ローマ帝国の始まりを示すこの王朝は、最初の6人の皇帝、ユリウス、アウグストゥス、ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、およびネロの治世を指す。ユリウスの肖像コインはあまり発行されておらず非常に稀だが、別のコインを代用してこのコレクションを完成することは可能だ。三頭政治期にはオクタヴィアヌスの名で知られていたアウグストゥス帝は、真のローマ帝国初代皇帝であると信じられている。イエス・キリストが生きていた時代のローマ皇帝タイベリアスは、保守的で皇帝が神と呼ばれることを拒否した。タイベリアスは金貨と銀貨を大量に発行し、銀貨は後に聖書の中でトリビュート・ペニーと呼ばれた。ガイウスの名でも知られるカリグラは権力に溺れるようになり、西暦41年に暗殺された。この最初の6人の皇帝が発行したコインの中、カリグラのものは最も高価で希少である。たった4年の治世であったが、悪名は知れ渡った。当時50歳であったカリグラの叔父クラウディウスは、親衛隊に推挙され皇帝の座についた。ブリテン島の大半を征服し、13年に渡る成功に包まれた治世であったが、4番目の妻の手により毒殺された。クラウディウスに継ぎ皇帝となったネロは、ローマ史の中で最も名の知れた皇帝である。17歳で皇帝の座につき、哲学者や参事官を統治の補助官として雇った。多くの才能を持ち、帝国中の音楽や詩のコンテストにも参加した。一般的に信じられている説と反し、ネロが燃えているローマを見ながらリラを弾いていたという事実はなかったと現在では思われている。実際は逆に自らローマの再建に尽力し、自分の富の相当をその資金に充てたようだ。

4皇帝の年:西暦68年にネロが死去した後、ローマは多くの波乱に満ちた時代を経験した。ガルバ、オットー、ウィテッリウスはローマ内戦の最中に死去し、それぞれの治世は数カ月のみであった。継いで皇帝となったウェスパシアヌスは、ローマを10年間統治した。これらの皇帝のコインは在期が短かったことから非常に数が少なく、他の皇帝に比べ歴史的なインパクトはあまりない。一般的に、これらの12人の皇帝のものの内オットーのコインが最も高価で、どの金属のコインであれ完全版のコレクションを作るのは収集家にとって非常に難しい。このような理由から、統治期間がより長く、歴史にくっきりとした足跡を残し、多種多様なコインを発行したほかの王朝に焦点を向けた方がいいかもしれない。

フラウィウス朝:ウェスパシアヌスがエジプトの軍隊の支持を得て皇位に就いた後、ある程度の平常性がローマに戻った。ウェスパシアヌスは賢帝として知られ、元老院との関係を修復するのに尽力した。ウェスパシアヌスの退位後、息子のティトゥスが皇位を継承した。ティトゥスはユダヤ戦争を鎮圧し、今も残るティトゥスの凱旋門を建設したことでも知られている。ドミティアヌスは、ウェスパシアヌス帝の息子でありティトゥス帝の弟にあたる。ティトゥスに引き継ぎ帝位に就いたが、ティトゥスの始めた政治的緊張の緩和には務めず、ユダヤ人やキリスト教徒を迫害し皇帝を神と呼ぶよう命じた。

ネルウァ=トラヤヌス朝:12皇帝に続くこれらの皇帝は、「アダプティブ・エンペラー(養子になって帝位を継承した皇帝)」として知られている。直系の血縁者が世襲したのではなく、実力者を養子にし教育して即位させるという形式を取ったためである。ネルウァ、トラヤヌス、およびハドリアヌスがこの養子継承制度を適用した。それぞれローマに貢献し、ローマ帝国の領域拡大に努めた。ネルウァの治世はたった2年間であったが、トラヤヌスは19年、ハドリアヌスは21年間ローマを統治した。

アントニヌス朝:ハドリアヌスの養子の一人であるアエリウスは、当初王位を継承することを期待されていた。だが戴冠前に死去したため、彼のコインは少ない。養子継承の形式を引き継ぎ、ハドリアヌスはアエリウスの兄弟のアントニヌス・ピウスを後継者として選んだ。ただし、退位後にマルクス・アントニウスとルキウス・ウェルスを後継者として任命するという条件付きのものであった。アントニヌス・ピウスの23年の治世下、ローマは以前の絶え間ない戦いの歴史を繰り返すことを避け、比較的平和なものであった。罪が証明されるまでは無罪であるという概念、男女平等、孤児の権利など、今日の世界を形成するいくつかの重要なコンセプトはアントニヌス・ピウスにより開拓された。「哲人君主」として知られるマルクス・アウレリウスは、共同皇帝のルキウス・ウェルスと共に19年間ローマを統治し、アントニヌス・ピウスが奨励した社会の道徳と平等に貢献し続けた。マルクス・アウレリウスは養子継承制を選ばず、息子のコンモドゥスを後継者として任命した。治世初期には大きく期待されていたコンモドゥスだが、以後のローマ衰退のきっかけになった存在であると見なされるようになった。

アントニヌス朝に続くいくつかの時代は、ローマ帝国の進退を繰り返す波乱に満ちたものだった。これらの各皇帝のコインを個別に収集することも、特定の皇帝を選択し幅広い歴史的コレクションを構築することも可能だろう。通常、以降の皇帝はセウェルス朝、軍人皇帝時代、ガリア帝国、テトラルキア(四帝統治)、コンスタンティヌス、帝国末期に分別されている。

 

古代コインコレクション・テーマセット

古代コインには多数のテーマがあるので、タイプセットに組み込んでも、単体のセットとして集めるのも手だ。同様の神話をベースにしているため、ギリシャとローマのコインにはオーバーラップする部分もある。魅力的な広範囲に渡るセットを構築することが可能だ。こちらの提案を参考にしてほしい。

 

動物:アンテロープからオオカミまで、さまざまな動物のコインが存在する。特に人気のあるテーマは、鳥、牛、イルカ、馬、ライオン、または神話上のペガサスなどだ。これらのコインは魅力にあふれ、一目でそれと分かるデザインだ。全ての通貨または金属塊に動物のデザインが施されたものが存在する。特にギリシャコインでは、表面、裏面の両方に動物が描かれていることがあるので非常に多様な古代コインコレクションを作成できる。

 

大判コイン:ローマとギリシャの大判コインのデザインは非常に複雑で、優れた芸術的才能を駆使して作られている。ローマのセステルティウス貨はアメリカのハーフダラーよりも大きく、重量もはるかに重い。この大判のコインを手にした時の心躍る気持ちは何とも言えない。セステルティウスのような大型の青銅コインは、ディテールのレベルに応じて価格もさまざまだ。ギリシャのテトラドラクマ銀貨も大判で、芸術性や保存状態によってかなり高額になる場合もある。だが大量に造幣されたものも多くあり、このようなコインはもっと手軽に購入できる。ギリシャの銀製のデカドラクマや金製のオクタドラクマは、古代コインの中でも最も高価なもので、ことのほか美しいデザインが施されている。しばしばギリシャコインの最高品質のものであると言われるデカドラクマは、ほとんどの主要コレクションの中心的存在である。

 

軍事:ギリシャもローマも平和的な文明ではなかった。そのため、軍事は常に日常生活の一面でもあり、戦争や戦いで使われた道具などを称えるコインも多くあった。武器、鎧、戦闘の描写、勝利を象徴したコインはかなり頻繁に見られる。これらのコインは見た目に多様でありながら、テーマに一貫性を与えることができる。

 

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ミューズ(ムーサ):紀元前56年、共和制ローマは有名なミューズ(女神、ムーサとも呼ばれる)をそれぞれに描いた9枚のデナリウスコインを発行した。モデルとなった女神の彫像は、フルウィウス・ノビリオルが戦争で勝利を収めたアエトリアからローマへと持ち帰ったものである。これらの女神像は、ヘラクレス・ムーサ神殿(Temple of Hercules Musarum)に据えられた。ちなみにこの神殿は、クィントゥス・ポンポニウス・ムーサの神話上の祖先によって建てられたと言われている。それぞれのミューズは、叙事詩、恋愛抒情詩、抒情詩、讃歌、悲劇、喜劇、踊り、歴史、天文と、各古典学の分野を象徴している。裏面のデザインがとても興味深いコインで、あまり知られてはいないが歴史を感じるセットを構築することができる。人間の創造性や芸術を高く評価する姿勢は、過去二千年間変わっていない。この過去と現在の繋がりをセットで表すことができるのではないだろうか。

 

歴史的建造物:ギリシャとローマの歴史的で興味深いコインの多くには有名な建造物が描かれており、コイン収集の楽しみをいっそう深める。描かれた建造物には現存しないものも多くあるが、コインを通して昔を垣間見ることができる。最も有名で人気のコインは、コロッセオとして知られるフラウィウス円形闘技場が描かれたものだろう。当初のダメージを受けていない輝かしい姿が刻印されているので、数々の地震や災害にさらされる以前はどのようなもであったか想像することができる。ローマ皇帝トラヤヌスはその建築でも名高く、コインのいくつかには彼の築いたフォルムが並外れたディテールで描かれている。これらのコインは、一般的なコレクターでも手の届く価格だ。フォルムは現在は完全な形として残ってはいないが、トラヤヌスの発行したコインのひとつには記念柱が裏面に刻印されており、この建築の傑作がいかなるものであったか確認することができる。この記念柱の高さは、トラヤヌスがフォルムの建造のために削り取った丘の高さと同じだと言われている。

 

オリンポス12神と他の神々:ギリシャとローマの神話はさまざまな神々のエピソードに満ち溢れており、それらがコインに描かれていることも多い。お馴染みの神や人物が描かれたコインを集めたセットは、故事を伝えるのに打ってつけだ。コレクターであろうがなかろうが、共通して楽しめる橋渡し的存在である。信奉者により製造され、アフロディーテからゼウスまでほぼすべての神や女神のコインが存在した。

 

家系:歴代皇帝はしばしば自分の子供や家族のコインを造幣した。家族を尊んだアントニヌス・ピウスは、裏面に子供たちが一緒に描かれたコインをいくつか発行した。養子継承制の時代は、血縁ではないが新たに王族に加わった新メンバーを祝ってコインが発行された。皇位継承がすでに決まっていた際は、就任前の若い皇帝のコインが父である現皇帝の名の下発行されることがよくあった。

 

歴史:アレキサンダー大王はギリシャ統治者として世界の大部分を征服した。世界の大半の金を我がものとし、これらの金を溶かし大量の金貨を製造した。アレキサンダーが発行したコインの表面にはアテナ、裏面にはニケが描かれていた。紀元前336年頃に造幣されたこのデザインはギリシャの通貨であったスターテル貨に最もよく見られ、視覚的にも素晴らしく実に歴史的である。

 

歴史的女性:自分の妻を描いたコインを発行したローマ皇帝は多く、これらは従来の男性の肖像を描いたコインのコレクションと並び集めがいのあるものだ。古代ギリシャでは、プトレマイオス朝のコインにしばしば支配者の妻が描かれている。ベレニケとアルシノエは、オクタドラクマとデカドラクマ、および重量が約54グラムもある重く希少なドデカドラクムに描かれている。

 

オリンピック:オリンピックはギリシャの生活に密着していたため、特定のイベントや競技がコインに描かれたのはもっともなことだろう。同様の競技はローマのコインにも描かれていたが、これらは以降、軍馬に引かれた戦車や戦闘シーンに取って代わった。ギリシャのテトラドラクマは直径が大きく、彫刻家が競技者の強さや競技のシーンを詳細に描写するためのスペースが十分にあった。

 

地理:ハドリアヌスはローマ近郊にとどまっていた多くの皇帝とは異なり、帝国中を旅したことで有名だ。アフリカからエジプト、スペイン、およびナイル川横断を記録した一連のコインを発行した。ほぼ2千年経っているにもかかわらず、今でも同じ名前の同じ場所を旅行者が頻繁に訪れている。興味深い人間社会の特性をコインが今に伝えている。

 

来歴:過去数世紀に渡り、多くの有名なコレクションが構築された。これらのコレクションに含まれていたコインは出所が明確であるため、以前の所有者を確定することも可能だ。特定のタイプの1例として、他の世界的なコインと共に選りすぐられたという点に注目するのも面白いのではないだろうか。また、古代コイン収集の法的な所有権を確認するのが容易であり、盗まれたコインを買ったり、違法的な発掘現場からのコインを買ったりするリスクを軽減できるというメリットもある。さまざまな埋蔵金も発見されており、これらが以後市場に出回ったこともある。これらのコインは発見に関連する歴史的事項が結びついているため、しばしばプレミアが付く。特にエキサイティングな例のひとつは、1895年のポンペイの発掘調査の際に発見されたボスコレアーレの埋蔵物だ。1800年以上前に起こったヴェスヴィオ火山噴火の灰や瓦礫の中に埋まっていたため、ここで発見されたコインには非常に興味深いトーンパターンがついている。

 

次のステップ

古代コイン収集に関するいくつかの背景とオプションを把握できたと思う。古代コイン収集の旅をこれから始める、または続行する役に立つのではないだろうか。古代コインには多くの選択肢があり、またコインに関する文献は生涯で読み切れないほどたくさんある。だがこの記事から、どのようなものを集めることができるかより広い見識を得ることができたのではないだろうか。これからも多くの情報に基づきコインを選りすぐり、この先何年も継続して楽しめるものを見つけ出せるよう願っている。

Happy hunting!

 

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本記事は、『COINWEEK』の翻訳記事です(掲載許可有り)。元記事は以下のリンクより確認できます。

参考:https://coinweek.com/ancient-coins/a-guide-to-ancient-coin-collecting/

タグ: 古代コイン

アンティークコインタイムズ編集部

著者:アンティークコインタイムズ編集部

アンティークコインタイムズ編集部は、アンティークコイン投資をはじめ、世界のあらゆるアンティークコインの歴史やストーリー等を中心に発信しています。アンティークコインの価値や楽しさをより多くの人に伝えられるように、日々良質なコンテンツを作成しています。